たった一つ、叶うのなら。




落ちた流星




これは不毛な恋だ。
はじめから分かっていた。
彼女が初めて此処に来た時から、これはもう決まっていたんだ。
「……ハレルヤ、僕は一体どうしたら」
心の内へ、もう一人の自分へと話しかけるも、彼は決まって「手に入れたいと思うんなら奪い取れ!」の一点張りで、参考にならない。
そんなことは出来ない。
そう思うのは、君が笑っているから。
ロックオンの隣で一番綺麗に微笑うから。

「どうしたの、アレルヤ?」
やさしい彼女の声がする。
それはとても耳によく馴染む、上質の音楽のよう。
デッキで宇宙を見ながら思い悩んでいた僕を見かけて、彼女はここにやって来た。
すぐそばに彼女がいる。
思わず伸ばした手を、彼女は不思議そうに見つめている。

その名を呼べば、小首を傾げて彼女は続きを待つ。
伸びた黒髪がさらりと揺れて、重力の無い中、ふわりと広がった。
「アレルヤ?」
「こんな事、言っても意味がないって判ってるんだ」
苦しい。
喉が痛い。
声を絞り出すように、僕はと向き合う。
言っても意味が無いことだ。
それどころか、悪戯に彼女を苦しめるだけだと、そのことも判っている。
それでも言わずにいられない。
「でも、もし、もし僕が先にを見つけていたら」
衝動的に引き寄せて、抱き締めた身体は困惑に震えた。
ごめんね、
こんな時でも君のやわらかさに嬉しいと感じてしまう僕を許して欲しい。
「僕が誰よりも先にに逢っていたら」
君は僕を愛してくれただろうか?
ロックオンではなく、僕を。
たったひとつ、叶うのなら。
君に好かれたい。
友人としてではなく、恋人として。
誰よりも近くにいたい。
守りたいんだ、君を。
愛されたいんだ、君に。
「ア、 レルヤ……?」
戸惑うように僕を呼ぶ。
違う。
こんなのじゃない。
望んだのは、こんな声じゃない。
もっとあたたかくて、もっときれいな。

『ロックオン』

そうだ。
彼女が彼女の愛しい人を呼ぶ時の様に。
あんな風に呼ばれたい。
だけどそれは叶わない。
知っていて、望んでしまうのは強欲だろうか。
手に入らないものばかり望むのは、罪深いことなのだろうか。
……」
どうしてこんなに苦しいのかな。
ただ、君が好きなだけなのに。


完成日
2008/11/02