諸注意 此処から先は管理人による捏造万歳のパラレルワールドです。 まず最初にリドルが教師なんぞをやっております。 名前変換はハリポタの固定主人公と同じものを使っておりますが、連載に出てくる主人公達とは全く別人です。 サドっ気のあるリドルに立ち向かう勇気のある方だけお読みください。 以下捏造設定。 ・リドル=ホグワーツの新任教師。担当教科は「闇の魔術に対する防衛」。 丁寧語口調だが相手を敬っていない。眼鏡着用。 ・主人公=ホグワーツの学生。6年生ぐらい。かなりしたたか。成績はそれなりに優秀。 名前変換は連載の親世代主人公のものを使用します。 色々ツッコミ所がありそうですが、スルーしてください。 Alpharea 02 引っかき傷 03 口付けの熱 01 残り香 ▲ 02 引っかき傷 当たり前だけど、リドル先生はとっても女の子に人気がある。ホグワーツの先生方はみんな偉い魔法使いや魔女ばかりだけど、おじいちゃん先生やゴーストの先生なんかに恋はできない。だからリドル先生が赴任してきた当初はそれはもう、大騒ぎだった。用も無いのに先生のいる準備室へと足を運び、かしましく騒いで先生に冷たくされた子が何人もいる。けれど彼女達はその冷たさがいい、と飽きることなくリドル先生に群がってゆく。今もそう。二時間続きの授業、その間の僅かな休み時間。いつもならさっさと奥にある準備室へと引っ込んでしまうリドル先生だったのだが、今日は何の気まぐれか、教卓に残って女の子達に囲まれている。きゃあきゃあと黄色い笑い声が響くその様を、あたしは教室の後ろの方の席でぼんやり眺めていた。 「どうした?顔色悪いぞ?」 クラスでもそれなりに親しい男の子が呆けていたあたしの顔を覗き込む。視界の中に急に入り込んだ彼の顔に吃驚して「ひぇ」と間抜けな悲鳴を上げてしまった。 「おまえなー、心配してやってんのにその態度はないだろう」 「あ、ごめん。ちょっとぼんやりしてたから」 眉をしかめても子供っぽさが残る顔立ちはやっぱりリドル先生みたいな大人とは違うんだな、と会話をしながらも思ってしまう。そもそもリドル先生と誰かを比べようとすること事態が間違っている。先生の完璧なまでの微笑は、それが嘘だと気付かれないぐらいに綺麗だ。今、リドル先生を取り囲んでその微笑に頬を染めている少女達の何人が気付いているのだろう。アレは贋物だ、ってことに。きっと誰も気付いていないし、気付かないままなんだろう。それとも気付かない方が倖せなのだろうか。何も知らないまま、青春時代の甘酸っぱい思い出に昇華できるのなら。 「なあ、ホントに顔色よくないぞ。保健室行った方がいいんじゃねーの?」 「ううん、大丈夫。ちょっと寝不足なだけだから」 心配してくれる声に小さく首を振りながら、あたしは昨夜の寝不足の原因である『彼』にまた視線を戻す。ちょうどその時、美人と評判の寮の中でリーダー格の女の子の声がした。 「やだ先生!怪我してるじゃないですかー」 大きく通る声に教室内の注目が集まる。リドル先生の右手の甲、人差し指と中指の付け根にはまだ新しい傷があった。爪で引っかいたようなその傷は、男性にしては白いリドル先生の肌に生々しく赤い痕を遺している。乾ききっていないそれは、今朝方ついたものだ。 「ああ、これですか」 リドル先生は自分の右手の甲に二本残るその傷に目を落とす。 「痛そう〜。先生どうしちゃったの?」 「これは……」 女の子の声にリドル先生は一瞬だけ、すばやくこちらへ紅い両の眸を向けた。其れは明らかに、その傷をつけたあたしへの合図で。再び視線を自らの傷へと戻したリドル先生の口元が、意地悪く笑みの形に吊りあがってゆくのをあたしは教室の後ろから見るしかない。 「……これはですね、猫にやられたんですよ」 ああ、やられた。と、あたしは思う。リドル先生は絶対にからかっている。誰にも知られないように、あたしだけを。 「猫ですか?」 きょとんと聞き返す少女の声に珍しく本当に楽しそうに、リドル先生は答えている。 「少し、手癖の悪い猫なんですよ。本当は早く欲しい癖に中々素直に言い出さないので、苛めてあげたら引っかかれてしまいました」 決して大きくはない声だけれど、はっきりと耳に届いたその言葉に頬が熱くなるのを感じた。先程からあたしの心配をしてくれる男子生徒は、にわかに赤くなったあたしにいよいよ具合が悪くなったのかと益々慌てる。そんなあたしの様子を見て、リドル先生はさらに意地悪を重ねてきた。 「とても苛め甲斐のある、可愛い『猫』なんですよ」 そう言って、これ見よがしに傷痕に唇を寄せたものだから。あたしは真っ赤になって俯くしかできなかった。耳まで熱くなって、少しでも火照りを冷まそうと添えた手の隙間からは女の子達の笑い声と、同じように笑うリドル先生の、聲。それは傷をつけた時と同じ、あたしにだけ意地悪をする先生の笑い声だった。 ▲ 03 口付けの熱 「ねえ先生、素敵な夕暮れだと思わない?」 窓の側に立って、暮れなずむ夕陽を惜しむフリをしながらそっと机に向かう人の横顔を眺める。橙色に照らされた輪郭。尖った顎、通った鼻筋、何かを思案するように顰められた眉。長めの前髪が落とす影。その影の中、薄いレンズに阻まれた奥の輝きを請うように。こちらを向いて、と。何度も何度も願った。 「先生?ねえ、無視するの?」 部屋の中に響くのはあたしの声だけ。後は書類を捲る事務的な音達が、時折思い出したように奏でられるだけ。 「リドル先生」 名前を呼ぶと、彼はようやくこちらへ向いた。しかし冷たい一瞥をくれただけで、すぐにその眸は手元の紙の束に戻されてしまう。 「せんせ」 「ミス・」 めげずに彼の人の注意を惹こうとあたしが口を開くより僅か早く、彼は家名を呼んだ。 「名前で呼んで、って言ったのに」 「それはできない、と私も言ったはずですよ。それよりもミス・、用がないなら出て行きなさい。仕事の邪魔です」 辛辣な言葉はしかもあたしを微塵と見ようともせずに吐き出される。用がないなら、と決め付けられて少しむっとした。この部屋に入る時に用件なら告げたはずだ。 「用ならあるわ。先生と一緒にこの素敵な夕暮れ時を過ごす事」 そう言えば、深い溜息でもって返される。 「ミス・」 「」 「……、見ての通り私は忙しい。君に構っていられる時間はありません」 「って呼んで」 「ですから」 「呼んでくれなきゃ酷いことするわよ」 一方的な幼い言い分にリドル先生は隠しもせずに深く息をつく。 「酷いこととは?」 ようやく会話らしい会話ができそうだ。嬉しくなってにっこりと微笑みながら懐から杖を出す。そうしてその先をまっすぐにリドル先生がさっきまで向かっていた細かい文字の並ぶ書類へ向けた。 「先生がとっても頑張ってやってたお仕事を灰にしちゃうわ」 「………」 本気を感じ取ったのか、リドル先生はこれ見よがしに深く長く息を吐いて、諦めたようにペンを机の上に置いた。インク壺の蓋をきちんと閉める、その几帳面さも好きだ、なんて。先生に何度言っても伝わらないだろうけど。とにかく今は、ようやく折れてくれた先生と少しでも長く会話しようと。注意深く、この部屋に入るまでに何度も繰り返し吟味した話題、先生も興味を持つような、高尚で有益で、そして面白おかしい話題を口にしようと顔を上げた所で、目の前が暗くなったことに気付いた。 「先生?」 気付けばいつの間にか席を立っていたリドル先生があたしの目の前に立っていて。先生が作る影に覆われたあたしは不思議に思って彼を見上げる。近付くとさらに際立つリドル先生の美貌。眼鏡の奥に隠された瞳に夕陽が入って、血の色のようにさえ見える。その魔力に囚われてしまったのか。近付いてくる先生の顔を何の抵抗もなく受け入れてしまったのだ。 「………っ、先生!?」 触れたのは唇。リドル先生が移したかすかな熱が残るその場所を、慌てて手で隠すあたしに先生は意地悪そうに目を細めて笑う。 「困りますね」 「んっ」 「折角長い時間をかけてやってきた仕事だというのに、灰にされては私の苦労が水の泡です」 「せ、んせ……!」 両手を取られ、無防備になったくちびるへ、頬へ。思わず閉じてしまった瞼へ、こめかみへ、額へ。リドル先生は顔中ありとあらゆる場所にくちづけて、熱を移してゆく。そのあまりにも急な展開についていけなくて。潤んだ瞳で抗議する様に睨めば、先生は喉の奥でくつくつと笑いを零した。それはまるで幼すぎるあたしの反応を嘲笑うかのように。 「どうしましたか?ずっとこうして欲しかったんでしょう?」 低く囁かれて、、と名を呼ばれて。へたり込みそうになるあたしの腰を楽しげに捕まえるリドル先生にせめてもの反撃を、と。あたしはその意地悪な弧を描く唇にかみつくようにして想いの熱を吹き込んだ。 ▲ 04 耳の奥の囁き ▲ 05 体を包む温もり ▲ |